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その後、ニ回にわたる石油ショックで化石燃料の消費量の伸びも頭打ちになり、ニ倍になるのは21世紀後半になるという一種の安堵感が広がっていた。
だが、この楽観論に水をさしたのは、熱波襲来の国民の不安に応えるために、米国上院エネルギー天然資源委員会が88年6月一13日に緊急招集した公聴証人に呼ばれた米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所のJ・H博士は、公聴会で「熱波襲来は、人為的な影響による『温室効果』による可能性が高い」と証言した。
その根拠となったのが、今後どう気温が上昇するかのコンピューター・モデルだ。
今のまま大気汚染が続いたら今後20年以内に過去の平均より一度(極地方では3度)も上がることになる。
10年以内に汚染物質の排出を完全に停止しても、温度の上昇は続く。
同博士は信頼を置かれている気象学者だけに、証言の衝撃度も大きかった。
これまでのモデルでは、現実の温暖化の影響が現れるのは、早くても数十年先としていたものが多かったが、このモデルでは来世紀早々には何らかの気象異変が現れてもおかしくない。
しかも、温暖化は一様に起きるのではなく、局地的な熱波や寒波、長雨や豪雨といった気象の混乱を伴うこともモデルで説明されることからも、説得性があった。
従来の地球温暖化の議論は、二酸化炭素の増加がその主役とされてきた。
しかし、他のさまざまな大気汚染物質も温暖化を招くことが分かつてきた。
それらの気体は「温室効果気体」と総称され、理論的には数十種ある。
その中で最大のものは、オゾン層破壊の元凶とされるフロンである。
フロンとフロン、の一分子は、二酸化炭素の一分子に比べてそれぞれ、ニ万5000倍とニ万2000倍も温室効果が高い。
水田や都市ガス、汚染のひどい河川などから出るメタンガスは30倍もある。
このほか、農薬原料やクリーニングで使われる4塩化炭素、自動車の排気にも含まれる亜酸化窒素なども温暖化の犯人だ。
国連環境計画(UNEP)の推定では、大気中のフロンガスは毎年5パーセント、4塩化炭素は一パーセント、二酸化炭素は0・4パーセントといった速度で増加している。
シミュレーションに、これらの温室効果気体の影響を加えると、温暖化の速度がこれまで考えられていたのよりも2倍になる。
これまであまりに二酸化炭素にばかり目を奪われて、その背後に控えていた他の元凶を見過緑の破壊が招く温暖化もう一つ、過去の予測で考慮されていなかったのは、緑との関係である。
これまでは二酸化炭素が増えても、かなりの部分を森林が吸収すると考えられてきた。
だが、最近の急激な森林の破壊から、緑も二酸化炭素の放出源であることが分かってきた。
樹木は伐採された瞬間から3重の意味で、二酸化炭素の供給源になることを思い出す必要がある。
1二酸化炭素の固定能力がそれだけ減り、2伐採された樹木は、木材となっても紙となってもいずれ燃やされ、3森林の土壌中に蓄えられている有機物が分解される。
国連食糧農業機関(FAO)の統計をもとにして、森林の伐採、腐食、焼失、地下の有機物の分解などによる二酸化炭素の放出と、一方の植林、農耕放棄地や伐採跡地の植林の回復などによる吸収を差し引き計算すると、植物群集から年間16億トンプラスマイナス8億トンの二酸化炭素(炭素量に換算して)が放出されることになる。
このうちの80パーセントは主として熱帯林の伐採や焼き畑によるものである。
化石燃料からの二酸化炭素の放出量が、炭素に換算して年間60億トン(90年の推定)だから、その4分の一に相当する。
1960年ごろの世界の森林統計によると、地上には40億ヘクタール以上の森林があった。
ところが、最新のFAOの調査では28億ヘクタールも残っていない。
年間の破壊速度を、FAOは一130万ヘクタール程度としており、米国政府は1000万ヘクタールとみる。
現在、アマゾンだけでも年間400万〜800万ヘクタール破壊されていることを考えると、この数字は少な過ぎると疑問を抱く専門家も多い。
いずれにせよ、毎分にして10〜40ヘクタールという猛スピードで消失している。
本来、地球上の森林地帯は二酸化炭素を増やしも減らしもしない平衡状態にあったと考えられるが、今や二酸化炭素の膨大な供給側に回ってしまったのだ。
この推計を補強するデータとして、大気中に同位元素の炭素uが増えていることが挙げられる。
この炭素皿は、大気中の窒素に宇宙線が衝突してできたもので、本来は大気中には一定量しかない乱はずだ。
炭素皿は大気中の二酸化炭素の炭素と、それを取り込んだ植物にしか存在しない。
半減期は約5700年だから、これよりはるか古い時代に動植物が変化してできた化石燃料ではとっくに消滅していて、それが燃やされても炭素Mは出てこない。
では、温暖化はすでに始まっているのだろうか。
各地の平均気温は1960年代半ば以後、上昇に転じている。
しかし、これを通常の変動の幅内とみるか、短期間にこれだけの変化は人為的な影響が濃いとみるかで議論が分かれ、まだ結論は出ていない。
ただ、多くの科学者がすでに何らかの異変が地球に起こり始めている危倶を抱いていることだけは間違いない。
温暖化は始まったと主張する科学者がいる一方で、88年、米国政府の科学者グループから「米国内に限っては、過去100年間に目立った気温や降水量の変化はない」とするレポートも提出されている。
これは内務省の海洋大気局(NOAA)のK・H博士ら3人が中心になって、1895年にまで遡って1987年まで、アラスカとハワイ両州を除く48州の約6000カ所の観測所の気象統計を洗い直したものである。
この結果、全体として気象統計上の有為な変化は発見できなかったという。
さらに、将来大気中の二酸化炭素が倍増したときに、温暖化の影響をもっとも被るとされるネブラスカ、モンタナ、ワイオミング、サウスダコタ州などのグレートプレーン(大平原)諸州の気象データだけを取り出して調べてみた。
この結果も、夏が乾燥化して冬に雨量が増大するという「温暖化モデル」に合致する変化は何も見つからなかった。
唯一、統計上の変化は、1970〜86年の間に秋期の降水量がわずかに増加していた。
これも、気象の通常の変動の範囲で、異常といえるものではないという。
これは、すでに温暖化が始まっていると主張するNASAのH博士とは、真っ向から対立するもので、H支持派は「世界の陸地面積の6パーセントしかない米国だけの温度変化だけでは、何もいえない」と主張している。
NOAAのグループも、温室効果が将来起こる可能性については否定していない。
むしろ、このレポートがその警告に水をさすことがないように、慎重にクギをさしているほどだ。
温暖化防止の処方菱温暖化防止をめぐる国際情勢は急を告げている。
その口火を切ったのは、1985年にオーストリアのフィラハで開かれた「地球温暖化に関する専門家会議」(フィラハ会議)であろう。
UNEP、WMO、ICSUの3者の主催で地球温暖化に関係する第一線の専門家が勢揃いした。
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